建設会社から「求人を出しても応募がない」「紹介会社へ頼んでも決まらない」「採用しても長く続かない」という相談を受けることがあります。媒体を増やしたり、求人原稿を書き換えたりしても、状況が変わらない会社も少なくありません。

なぜなら、建設業の採用は求人を掲載する作業だけでは完結しないからです。誰を採るのか、何を伝えるのか、応募後にどう対応するのか、入社後にどう育てるのか。この一連の流れを会社の経営計画や現場の実態に合わせて設計する必要があります。

この記事では、建設業に採用支援が必要な理由を、厚生労働省・国土交通省の公的統計と、株式会社Structive代表・竹井義和の原体験から解説します。外部サービスを一律に勧めるのではなく、社内に必要な採用機能は何か、どの状態なら外部支援を検討すべきかまで具体的に整理します。

結論|採用を「経営課題」として扱うために支援が必要

建設業に採用支援が必要な理由は、人手不足だから求人広告を増やすためではありません。採用を、経営目標、現場の人員計画、会社の魅力、選考、育成、定着までつながった経営課題として扱うためです。

採用支援という言葉は、人材紹介だけを指すものではありません。支援会社によって範囲は異なりますが、次のような機能を含みます。

  • 事業計画から必要な職種・人数・時期を整理する
  • 採用したい人物像と、採用してはいけない人物像を決める
  • 給与や休日だけでなく、仕事の価値や成長環境を言語化する
  • 求人媒体、採用サイト、紹介、リファラルなどの手段を選ぶ
  • 応募者対応や面接を整え、辞退やミスマッチを減らす
  • 入社後の受け入れと定着まで振り返る

これらを社内で実行できる会社は、必ずしも外部へ委託する必要はありません。しかし、中小建設会社では、社長や現場責任者が営業・施工・資金繰りと並行して採用を担うことがあります。採用の担当者、時間、知識、改善データのいずれかが欠けると、求人掲載だけが繰り返されやすくなります。

最初に行うことは、新しい求人媒体を探すことではありません。直近の採用を「応募前」「応募後」「入社後」に分け、どこで候補者が離れているかを確認してください。

建設業の採用が難しい3つの構造

建設業の採用難は、一社の努力不足だけで起きているわけではありません。採用市場の競争、年齢構成、若年者の入職・定着、労働環境などが重なっています。

2026年8月24日に確認した公的資料では、次の状況が示されています。

確認項目 建設業の状況 比較・意味
建築・土木・測量技術者の有効求人倍率 5.58倍 2024年度。全職業計は1.25倍
建設躯体工事従事者の有効求人倍率 8.56倍 2024年度。求職者より求人が大幅に多い
55歳以上の就業者割合 36.7% 2024年。全産業は32.4%
29歳以下の就業者割合 11.7% 2024年。全産業は16.9%
若年技能労働者を「採用できていない」企業 約7割 2025年度調査の回答企業全体

出典:厚生労働省「建設雇用改善計画(第十一次)」、厚生労働省「令和7年度 建設業における雇用管理現状把握実態調査報告書の概要」、国土交通省「令和7年版 国土交通白書」(2026年8月24日確認)

1. 候補者を待つだけでは接点を持ちにくい

2024年度の有効求人倍率は、建築・土木・測量技術者で5.58倍、建設躯体工事従事者で8.56倍でした。単純化はできませんが、求人側の競争が強いことは明らかです。求人票を公開して待つだけでは、候補者に見つけてもらえない可能性があります。

必要なのは、採りたい職種がどこで情報を集めるかを考え、媒体、採用サイト、紹介、知人経由、学校との接点などを組み合わせることです。媒体数ではなく、候補者との接点全体を設計します。

2. 会社の魅力が求職者の言葉へ翻訳されていない

地域で長く仕事を続けていること、社長が現場を理解していること、資格取得を支援していること、若手へ丁寧に仕事を教えていることは、その会社の魅力です。しかし、社内では当たり前になっており、求人票へ書かれていないことがあります。

「アットホーム」「未経験歓迎」だけでは、候補者は入社後の姿を判断できません。担当する工事、現場の範囲、一日の流れ、教育担当、独り立ちまでの目安、評価の仕組みを具体化する必要があります。

3. 採用と定着が別々に扱われている

採用人数を達成しても、入社後すぐに辞めれば現場の負担は減りません。募集時の説明と実際の仕事が違う、初日に誰も受け入れない、仕事の教え方が担当者任せになっているといった問題は、求人広告だけでは直せません。

建設業の採用難を市場競争、情報不足、社内体制の3層で示した図

厚生労働省の第十一次建設雇用改善計画でも、若年者の確保には処遇改善、教育訓練、資格取得と処遇を結びつけたキャリアパスの提示などが必要だとされています。応募を集める施策と、入社後に働き続けられる環境づくりは一体です。

次に、自社の課題を「母集団」「訴求」「選考」「受け入れ」「定着」の5項目に分け、最も弱い場所を一つ選んでください。

一人の採用失敗が経営へ影響する

中小建設会社では、一人の採用が売上、受注量、現場配置、既存社員の負担へ直結します。採用できなければ、仕事があっても受注を増やせません。反対に、人数を急ぐあまり役割や会社との相性を確認せず採用すると、教育工数や早期離職による負担が残ります。

Structive代表の竹井は、人材紹介事業の立ち上げ責任者として働き始めた当初、最初に支援した求職者が入社3日で離職する経験をしました。売上を求めるあまり、本人が職場に合うかという懸念を十分に扱わず、入社を強く勧めてしまったと振り返ります。

「会社にとっても、求職者にとっても、何一ついいことがありませんでした。両方にマイナスを負わせてしまったと感じています」

この経験から、採用決定をゴールにすると、会社と求職者の双方を傷つける場合があると学びました。必要なのは、入社数だけではなく、本人が役割を理解して働き続け、会社の事業に貢献できる状態をつくることです。

竹井が建設業へ特化した背景には、父親が経営する建設会社の採用失敗を身近で見た経験もあります。事業拡大のために営業職と専門職を採用したものの、期待した役割とのずれが埋まらず、最終的には退職と事業縮小につながりました。

これは個別企業の一事例であり、すべての会社へ当てはまるものではありません。ただし、「欠員を埋める」ことと「経営に必要な役割を担える人を迎える」ことは別だと分かります。

「会社側に立ち、その会社にとってプラスになる採用を支援すれば、会社と求職者の両方をウィンウィンにできるのではないかと考えました」

次の採用では、人数の横に「任せたい仕事」「必要な理由」「入社後90日で目指す状態」を書き加えてください。

採用支援が担う5つの役割

採用支援の価値は、求人業務を代わりに行うことだけではありません。経営者の考えと現場の実態を整理し、候補者へ伝わる形へ変え、採用活動を継続的に改善することにあります。

経営課題の整理から採用設計、実行、選考、定着改善までを循環させる採用支援の図

1. 経営課題を採用目標へ変える

「人が足りない」という相談を、職種、人数、配置、時期、期待役割へ分解します。本当に採用が必要なのか、業務分担や仕組みの見直しで解決できる部分がないかも確認します。採用ありきにしないことが、採用支援の出発点です。

2. 採用したい人物像を現実的にする

「若くて経験があり、資格を持ち、給与条件に合う人」と条件を積み上げると、対象者がほとんどいなくなる場合があります。絶対に必要な条件、入社後に育成できる条件、なくてもよい条件へ分けます。

3. 会社の魅力を具体的な情報へ変える

社長、社員、現場への聞き取りから、仕事の特徴や育成環境を言語化します。良い面だけでなく、早朝勤務、現場移動、繁忙期などの現実も説明します。候補者が判断できる材料を増やすことが、入社後の認識違いを減らします。

4. 採用実務を止めずに運用する

求人の更新、スカウト、応募者への連絡、面接日程、選考状況の記録は、日常業務に追われると止まりやすい部分です。担当と期限を明確にし、候補者を待たせない運用を作ります。

5. 採用結果を定着改善へ戻す

応募数だけでなく、面接率、辞退理由、入社理由、早期離職理由を振り返ります。採用した社員と現場責任者への確認を通じ、求人の説明、面接、受け入れへ改善を戻します。

「社長が抱えているモヤモヤを言語化し、問題を一つずつ課題に落とし込んで、少しずつ前へ進めていくことに価値があると思っています」

竹井が目指すのは、採用人数を一時的に増やすだけの支援ではありません。

「人と仕組みの力を使い、人に関わる課題を根本から解決していける会社になりたいと考えています」

採用支援を選ぶ際は、「何を代行するか」だけでなく、「採用活動のどの仕組みが社内に残るか」も確認してください。

外部の採用支援を検討すべき会社

外部支援が必要かどうかは、会社規模だけでは決まりません。採用課題と社内体制で判断します。次の表で、自社がどちらに近いか確認してください。

確認項目 社内中心で進めやすい状態 外部支援を検討したい状態
採用責任 担当者と意思決定者が明確 社長だけが空き時間で対応している
採用目標 職種・人数・期限・役割が明確 「良い人がいれば採る」のまま
応募状況 経路別の応募・面接・採用を記録 応募が少ない理由を確認できない
情報発信 現場・教育・働き方を具体的に発信 求人票が給与と仕事内容だけ
選考 連絡期限と面接内容が統一 連絡が遅れ、面接が担当者任せ
定着 入社後の担当と面談機会がある 入社初日以降は現場へ任せきり
改善 辞退・離職理由を次回へ反映 同じ求人を更新し続けている

3項目以上が右側に当てはまる場合、媒体を増やす前に、採用活動全体を整理する支援を検討する価値があります。ただし、支援会社へ任せれば必ず採用できるわけではありません。

仕事内容、社内の人間関係、現場の雰囲気、育成の実態は、外部支援者だけでは分かりません。経営者と現場が情報を出し、外部支援者が整理・実行・改善を支える役割分担が必要です。

相談前に、直近1年間の求人、応募数、面接数、採用数、退職数を一枚へまとめてください。数字が分からない項目そのものが、最初に整えるべき課題です。

よくある質問(FAQ)

建設会社は必ず外部の採用支援を利用すべきですか?

必ずしも外部へ委託する必要はありません。社内に採用担当者がおり、採用目標、人物像、情報発信、応募者対応、面接、受け入れ、改善を継続できるなら、自社中心で進められます。担当者や時間がなく、同じ求人を繰り返している場合は外部支援が選択肢になります。

採用支援と人材紹介は何が違いますか?

人材紹介は一般に、採用企業へ候補者を紹介することが中心です。採用支援は会社によって範囲が異なり、採用戦略、求人票、媒体運用、応募者対応、面接設計、採用サイト、定着支援などを含む場合があります。名称だけで判断せず、契約前に業務範囲、費用、自社が行う作業を確認してください。

採用支援を検討するタイミングはいつですか?

求人を継続しても応募がない、面接辞退や早期離職が続く、社長や現場責任者だけで採用を回している、採用結果を振り返る数字がない場合です。急な欠員が出てから探すのではなく、今後の受注や退職予定を踏まえて早めに人員計画を作ります。

採用支援会社へすべて任せれば採用できますか?

丸投げで成功するとは限りません。仕事内容、現場の実態、育成方法、会社の魅力は社内にしか分からないためです。経営者・現場・支援会社が情報を共有し、誰が何をいつまでに行うかを決めます。採用できない理由を率直に確認し、条件や選考も見直せる関係が必要です。

まとめ

建設業に必要なのは、求人広告を増やすことだけではありません。競争の強い採用市場で候補者との接点を作り、自社の魅力と仕事の現実を伝え、応募者へ速やかに対応し、入社後の定着まで改善する仕組みが必要です。

採用支援は、その仕組みを社内だけで作れないときの選択肢です。外部へすべて任せるのではなく、経営者と現場が持つ一次情報を、支援者が採用設計と実行へ変えます。

まずは直近の採用活動を「応募前」「応募後」「入社後」に分けてください。応募がないのか、面接へ進まないのか、入社後に続かないのか。課題の場所を一つ特定できれば、次に行うべき施策が求人媒体の追加なのか、情報発信なのか、選考改善なのかを判断できます。

※インタビュー引用は、発言の意味を変えない範囲で重複や口語表現を整えています。